第4回
〜ファッション・グルー(…?)日記〜

スタイリスト 小沢 宏


2005年1月×日

新年早々セレクトショップSのカタログ撮影でニューヨークへ。とはいえ、日本とは違い外国のニューイヤーなんてサバサバしたものだ。向こうはクリスマスから元日までが、日本のお正月にあたるものだと思ってくれればいい。JFK空港からマンハッタンへ。
いつものニューヨーク。“NYC is NYC"である。


1月□日

撮影スタート。流行りのエリア、ミートディストリクトにあるスタジオが現場だ。いかにも、といった古いビルの大きなエレベーターに乗って最上階へ。扉が開くとそこはまるで別世界。バーカウンター、洒落たソファー、過剰に広いスタジオ、窓の外はハドソン川、遠くには自由の女神まで見渡せる。おまけに、となりのスタジオではあのテリー・リチャードソンが撮影してるッ!この環境でダサいモノが生まれるワケがない。俄然、テンションが上る。


1月△日

撮影2日め。フォトグラファーに構図やモデルのポージングをアドバイス。すると彼は感嘆まじりに僕に向かって一言、「ファッション・グルー」と。グルーって導師のことォ…?
大げさだなって思いながら、やっぱりちょっと嬉しかった。


1月○日

帰国後、成田空港からそのまま打合せ先に。日本滞在約18時間。明日からはミラノメンズコレクションだ。時差ボケになる暇さえない。


1月×日

コレクション初日。今日だけで6つのメゾンを見る。しょっぱな「ジル サンダー」からスタート。本人が再度脱退してしまったが彼女らしいシックな大人のルックばかり。僕好み。
夜はセレクトショップBのバイヤーと雑誌Hの編集者と台湾料理屋で夕食。激ウマ!


1月□日

早くもコレクション最終日。締めは毎回、御大「ジョルジオ アルマーニ」。安藤忠雄がデザインしたアルマーニ・テアトロでのショーはまるで『アルマーニ劇場』。ある意味予定調和ではあるが見ずにはいられない。
そう、ミラノコレクションにおける紅白歌合戦的存在なのである。


1月△日

数年振りにロンドンへ。飛行機のトランジットの関係でたった2泊のロンドン滞在となった。今回はMENS BIGIディレクター坂田氏オススメのホテルへチェックイン。ロケーションもインテリアもグッド☆。ナイスリコメンドでした。荷物を置いたら即、買い物へ。
噂のドーバーストリートマーケットからボンドストリートを抜け、セルフリッジへ。とりえずここを見ておけば、トップブランドからストリートまで一通りのチェックができる大型ファッションデパート。
ここで突然目がパチリ!なんか似てるなぁ、とある人物の後ろ姿を追いかけてみれば、なんと坂田氏本人。偶然の再会に2人ともグーッと盛り上がり、当然そのまま行動を共に。ベイズウォーター駅近くの中華屋でメシを食い、2軒めはロンドン通の彼の案内で、サンダーソンホテルのラウンジにて男2人でカクテルを。かなりイイ感じに酔い、じゃあそろそろ…と席を立った瞬間、坂田氏が足元から拾い上げたモノは、なんと僕のホテルのルームキー!!
ほんと、サンキュー坂田クン。


1月×日

昨日の酒のせいか急に風邪に襲われる。貴重な1日をホテルのベッドの中で過すはめに。ガッカリ&グッタリ。



―とまあ、こんな調子で日々は続いてゆくのでした。

小沢 宏 氏(スタイリスト)

1964年 長野生まれ
MEN'S EX、BRUTUS、UOMO、HUGEなどの雑誌をはじめ、カタログのディレクションやアーティストのスタイリングなど、幅広く活躍中。
「NUMERO UNO」という洋服ブランドも手掛けている。