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第1回
〜BRINGING IT ALL BACK HOME〜
今秋冬のメンズビギのテーマは
「BRINGING IT ALL BACK HOME」。
1965年3月に発表されたボブ・ディランのアルバムのタイトルから
ネーミングしたものである。
ボブ・ディランは1962年のデビュー以来、社会事件をテーマにしたトピカルソングや
プロテストソングと呼ばれた自作の曲をアコースティック・ギターで歌い上げる
フォーク界のプリンスとして脚光をあびていた。
「風にふかれて」や「時代は変わる」などの名曲はこの頃の作品である。
ディランの重要な転機といえる、この5作目となるアルバムは
B面は従来のアコースティック・スタイルであったが
A面はロック・サウンドが大胆に取り入れられているものであった。
これは当時のシーンに衝撃をあたえ、ロックの歴史においても
大きな意義を持つ作品である。
アコースティックからロックへ。
ディランに変化をもたらした大きな要因は、
前年の1964年にツアーで初めて訪れたイギリスにおいて、
ビートルズやストーンズといった当時のイギリスを席巻していた新しいロックに
多大な影響を受けたことである。
アルバム・タイトルの「すべてを故郷に持ち帰る」とは
ロックをイギリスから母国アメリカに持ち帰るという事を意味するものだ。
オープニングを飾る「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」を筆頭に
収録された楽曲のどれもが、ロックを完全に己の中で吸収し、
ディラン流の「フォーク・ロック」という新しい形に昇華されたものであり、
以降の変わることのない彼のスタイルの原点といえる内容である。
このロックへの「転向」は大きな物議も巻き起こす。
当時の保守的なフォーク・ファンからは激しい非難をあび、
後のコンサートでは、バンドを従えた大音量のロック・サウンドに
各地でブーイングの嵐に見舞われることとなる。
しかしアルバムのセールスはそれまでのどの作品より好調で、
新しいファンを中心に、ディランの人気は急速に高まっていく。
半年後にリリースされた、ディランの最高傑作として名高い6作目の
「HIGHWAY61 REVISITED」でディラン流フォーク・ロックを
完全なものとするのである。
また多くのアーティストがディランの影響を受けるのだが、
かつてイギリスでディラン自身が影響を受けた、ビートルズやストーンズ
までもその例外ではなかったのである。
メンズビギでは、このストーリーをファッションのベクトルに置き換え、
自身の原点である英国への回帰。そして新しさとオリジナリティの追求による
さらなる「進化」を目指すべく、このタイトルをテーマとして掲げたのである。
ファンの方にとっては、ここに綴られたディランのエピソードや作品は既知のことと
思うが、ファンでない方もふくめて改めてこれらの作品を聴いてみてはいかがだろうか。
40年近くたった今でも色褪せない「新しさ」を感じ取れることと思う。
‘65年のヨーロッパ・ツアーの模様が収められた映像作品
「ドント・ルック・バック」や
‘66年のイギリス・マンチェスターでの伝説のライブアルバム
「ロイヤル・アルバート・ホール」は、当時のディランをより深く知ることができる
ドキュメント性の高い作品である。
こちらもあわせてお薦めしたい。
<’03年8月20日>
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